カキ氷  part.2 next


家に戻る。鍵を開ける。
なんか静かだ。
そっか、知り合いのとこに二人とも行くって言ってたよな。
まいっか。

「誰もいないけど、あがって、なんか飲んでけば?」
「おお、そうする」
「ちょっと待て!」
「なんで?」
「あのさ、なんか、こう、ちょこっと遠慮したり、しないの?」
「え?なんかまずいんなら帰るけど?」
「そういうことじゃなくて……」

「だから〜、一つ屋根の下に、うら若いかわいい女性と、
 二人だけだったりしたら、やっぱり? ね?」
「……なるほど」
やっとわかったようだ。

「で、その『うら若いかわいい女性』ってのは……どこに?」
わざとらしくまわりを見回してる。
「わかった。もういい!」

ダイニングにたどり着く。

冷蔵庫をあけたら、麦茶の隣にビールがあった。
なんか飲んでみたい気がした。ちょっとだけ。

「お待たせ」
「どうも……って、これビールだろう?」
「固い事いわないで。少しだけなら大丈夫でしょう?」
「ま、少しなら大丈夫かな」
「飲んだことあるの?」
「まあな、一応」

栓を抜いて、グラスに半分ついで、乾杯した。
「ユリの五度めの失恋にカンパーイ」
人の嫌がることを平気で言う。

今度のはちょっとショック大きくて、半端じゃなくへこんでる。
それがわかってても、
まともになぐさめの言葉をかけるような奴じゃない。

それにしても…… 回数… 五度目って… 合ってる……
なんで?

ともかく、グラスを一気にあけた。
ちょっと苦かったけど……

「おいしい!!!」
「そうか。そりゃよかったな。まあ、のど渇いてるからな」
自分でつぐ。
「おいやめとけ!」
「なんの権利があってそんなこと言うの?
 これはうちのビールだし、私が飲むんだから」
「わかったわかった。いいよ」
あえて雄介は逆らわない。

いろんな話しをした。
でも、ほとんど私が一人でしゃべってた気がする。
そのうち、酔いが回ってくる。なんかポワーッっとして。
同時に、とてつもなく悲しくなってきた。


『悪い、俺好きな人がいるんだ。だから…… ごめん。』


なんだ馬鹿やろう、あんな奴。
どんだけの思いで私が告ったかもわかんないで、
あんなに簡単に…… ひとことで…… 私の気持ちを……

「わかるわかる」
「そうだろう雄介。ひどいだろ?」
「そうそう」
「なんか、あいづちがひどくいいかげんに聞こえるけど……」
「いやぁ、そんなことはない」
そう言ってる割には、視線の先はしっかりTVのサッカー中継。

そういう薄情な奴は放っておいて、もう一杯!
と思ったら、ビール瓶はとっくに空になっていた。
冷蔵庫を見たが最後の一本だったらしい。

こんな半端な気分で酔いが覚めてしまうのがこわかった。
というより、正直に言えば、一人きりになりたくなかった。
こいつでもいいから一緒にいて欲しかった。

「おまえ、そりゃやばいって」
「い〜のい〜の、ハイ!」
父親の棚から持ってきたバーボンを飲む。
強烈な刺激が……はんぱじゃなく喉が焼ける。
でも2杯目からそれが快感にかわっていく、不思議なことに。
結構、私って、お酒、強かったりして?

気づくと私は泣いていた。
雄介の胸に顔を埋めて。
あったかい。すごく。


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